ジェフ・ベゾスのループ図(善の循環:ヴァーチュアス・サイクル)の破壊力
ジェフ・べゾスが創業者したAmazonは、今でこそGAFAM(Google、Facebook(=現Meta Platforms)、Apple、Microsoft)と呼ばれる世界で圧倒的な力を持つ企業の一つです。
ジェフ・ベゾスがAmazonの前身となるcatabra.com(カタブラ・ドット・コム)を立ち上げる際、ファミレスで仲間とミーティングをしていたときに、テーブルの紙ナプキンに書いたループ図(インフォグラフィック)が有名です。
ジェフ・べゾスがAmazonの構想を思いつくまでの経緯や「紙ナプキンに書いたループ図」を紹介します。
eコマース市場の最大手Amazonの歴史
Amazonの構想が閃く
ジョン・ベゾスは退学を卒業し、スタートアップ企業のFitel(金融決済システム)、バンカース・トラスト(大手金融サービス会社)を経て、ニューヨークのD.E.Shaw(新興のヘッジファンド)に勤務していました。
D.E.Shawでは1990年から1994年まで仕事をし、30歳のときには同社で4人目のシニア・バイス・プレジデント(副社長)になりました。
そのとき目覚ましい成長率をみせていたインターネットビジネスについて調査していたところ、次の時代はこれだというアンテナが働き、インターネットでモノを販売するAmazonの構想を思いつきました。
取り扱う商材は何にするか考えたときに、当時競合がいなかった本の流通に目をつけ、ベゾスは書籍のインターネット販売で起業することを決意し、副社長の座を降り同社を退社しました。
自宅ガレージにて事業スタート
ジョン・ベゾスは1994年にシアトルの自宅ガレージにて事業を立ち上げました。「catabra.com(カタブラ・ドット・コム)」はAmazonの前身となる会社で、ここからAmazonが生まれた場所だといって良いでしょう。
翌年の1995年に今の会社名である「Amazon.com」に社名を変更しました。その理由は、「catabra.com」という社名が、死体という意味の「cadaver」と聞き間違えられてしまったためです。
設立から3年でナスダックへ上場
両親が30万ドルともいわれる金額をアマゾンに投資し、知名度やシステム開発の費用に費やしました。それが功を奏し、ローンチしてからわずか1ヶ月で知名度が拡大し、アメリカ全州、世界45カ国へ本を発送。
2ヶ月後には、一週間の売上が2万ドルにまで達したと言われています。このように順調な滑り出しをみせたAmazonは、設立から3年後の1997年、米株式市場ナスダックへの上場を決めました。
株式公開により競合買収&ITバブル崩壊
株式公開で調達した5,400万ドルを資金として小規模な競合他社を積極的に買収し、音楽やDVD、ゲーム、ホーム&キッチン、スポーツ&アウトドアなど商品を増やす取り組みを始めました。
21世紀初頭のITバブル崩壊により多くのIT企業が倒産に追い込まれ、Amazonも例外ではありませんでした。Amazonの株価も113ドルから6ドルに暴落。
しかし、2002年に天気予報チャンネルとウェブ・トラフィックからデータを集積してアマゾン・ウェブ・サービス、2003年に小売業者がAmazonで出店できるシステムAmazonマーケットプレイスを導入し、逆境を乗り越え急成長します。
送料無料の「Amazon Prime」がスタート
ECショッピングの配送料が高くついてしまうという問題を解決すべく、2005年に会員サービス「Amazon Prime」を開始します。今でこそ当たり前に感じますが、Amazon Prime会員になると送料無料になり、注文した翌日には配達が完了。
消費者のニーズを的確にとらえたサービスは、Amazonを一躍有名にしました。
電子書籍「kindle」が大ヒット
2007年に「Kindle」デバイスが販売されます。オンラインで本が読める、片手の中に図書館があるなどと話題となり、驚異的な人気で品切れが続出します。
Prime Video・Prime Musicの提供開始
2015年に動画見放題サービス「Prime Video」、音楽配信サービス「Prime Music」、商品を1時間以内に配送する「Prime Now」など、プライム会員向けのサービスが充実していきます。
そして、2018年には米株式市場で、Apple社に続く2社目の時価総額1兆ドル超える企業となりました。
(動画版)ジェフ・ベゾスのループ図の解説
私は英語のリスニングが得意」という方は、ぜひ下の動画をご覧ください。
ジェフ・ベゾスのループ図
顧客体験(Customer Experience)、訪問者(Traffic)、出品者(Sellers)商品(Selection)の4つの要素が好循環をもたらすことで、Amazonの顧客体験は継続的に改善されることになります。
そして、売り上げはどんどん大きくなり、AmazonのEC事業が成長していきます。
インフォグラフィックから読み解く
インフォグラフィックはクリックすると拡大できます
参照元:https://amazon.jobs/jp/landing_pages/about-amazon
1.顧客体験(Customer Experience) ⇒ 訪問者
顧客体験(Customer Experience)から訪問者(Traffic)へ伸びる矢印は、「顧客体験」が良くなればよくなるほど、「訪問者」も増えていく結果になることを指しています。
2.訪問者(Traffic) ⇒ 出品者
次に、訪問者が増えると売上が伸びます。ジェフ・ベゾスの戦略のすごいところは、増えた訪問者(Traffic)を出品者(Sellers)に開放したところです。
一般的には、儲かったお金で新たな広告を打ち、今以上にAmazonの知名度や認知度を上げたり、業務の効率化に投資するなどの施策をうち、更なる売上の拡大を目指すことが多いように思えます。
しかしジェフ・ベゾスは「Amazonの売り場を他の出品者にも開放する」という新たな戦略を選びました。それが、「訪問者(Traffic)から出品者(Sellers)に伸びている矢印です。
なぜ、Amazonはぜっかく囲い込んだ訪問者をライバルに開放したのでしょうか。
3.出品者(Sellers) ⇒ 商品
2の施策をとった理由の答えは、商品(Selection)を充実させるためです。
品揃えを増やすためには、在庫を持つ必要があります。大量の在庫を準備するには、大きな倉庫を持つ必要がありますが、売れない在庫は損失になります。大量の在庫を持つことは大きなリスクです。
「このリスクを負わずに品揃えを充実させるためにはどうすればいいか?」を解決したのが、Amazonを他の出品者の売り場にも開放する秘策でした。
4.商品(Selection) ⇒ 訪問者
商品(Selection)から顧客体験(Customer Experience)へ伸びる矢印は、商品の品揃えが増えれば増えるほど「顧客体験」が改善されることを指しています。
商品の品揃えだけが顧客体験ではありませんが、ベゾス氏は顧客体験を向上させる最優先事項として「商品の品揃えの充実」を選んだという決断です。
事業の規模の成長による効果
5.成長(Growth) ⇒ 低コスト構造
事業の規模が大きくなると、企業にどのようなメリットが生まれてくるのでしょうか。
- 商品1つあたりの広告宣伝費が安くなる
- 商品1つあたりの仕入れ値が安くなる
- 商品1つあたりの在庫管理コストが安くなる
- 商品1つあたりの配送コスト
⇒ 商品1つあたりにかかる様々な費用が安くなっていきます。
つまり事業そのものが低コスト構造(Lower Cost Structure)になっていきます。その結果、同じ値段で商品を売ったときよりも、より多くの利益が得られるようになります。
6.低コスト構造(Lower Cost Structure) ⇒ 低価格
ベゾス氏が儲けよりも優先したのは低価格(Lower Prices)の構造の実現でした。しかもこのビジネスモデルが優れているのは、商品の一時的な安売りではないことです。
低コスト構造によって生み出される低価格は、「無理のない安売り」です。事業が低コスト構造になっていけばいくほど、無理のない低価格を実現しやすくなっていきます。
7.低価格(Lower Prices) ⇒ 顧客体験
低価格(Lower Prices)から顧客体験(Customer Experience)へ伸びる矢印は、「低価格」がもたらす「顧客体験」の向上につながります。価格は他のサービス同様に顧客によって比較される重要な一つの要素です。
上記の繰り返しになりますが、顧客体験は商品の低価格だけではありません。さまざまな取り組みによって顧客体験が改善されています。Amazonでは日進月歩で顧客体験が改善されて続けています。
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