派遣労働法改正の歴史が一目でわかる。派遣社員は使い捨てなのか!?

政治・経済・社会,歴史・沿革,法律・ルール制度の課題

一番わかりやすい労働者派遣法の歴史

派遣労働者の法改正は、1996年から人材派遣が利用されやすいようになり、1999年には派遣できる業務を26業務へと拡大させました。その後、さらに当時は禁止されていた「製造業」や「医療関連業務」の派遣が解禁されました。

この先の派遣対象業務は、どこまで広がっているのでしょうか。そして、企業に利益をもたらすことは経済指標を見ても明らかですが、派遣業で働いている人たちは、幸せな生活を送ることができているのかは疑問です。

派遣社員によるエピソード

労災がおりない

金属加工業で働いている2年目の派遣社員の話しです。勤務中の不注意で、作業機械に指を挟み怪我をしました。作業に慣れていたせいで、いつもの確認を怠ったのが原因。病院へ急行し全治一ヶ月の怪我でした。

しかし、会社は労災にはしてくれなかった。労災が下りなかった理由は以下3点。

  1. 作業マニュアル通りに仕事をしていなかった
  2. 派遣先が認めない
  3. 軽傷の怪我では労災にはできない

法律的には、業務中の怪我で病院に行った時点で労災確定なのにもかかわらず、治療費も保険証も負担。その期間は怪我のためいつもの仕事はできいなかったが、出勤して掃除などを行った。

派遣先や派遣元は、労働基準監督署の締め付けが厳しすぎると企業は隠蔽していく傾向があり、そのしわ寄せは派遣社員に来ることが多いことを身を持って体感した。

労災の認定は派遣先や派遣元ともめて、労災にすることはできたかもしれない。しかし、その先のことを考えたら行動できなかった。何より私に一番必要なのは、仕事がなくなること。この職場は、1年弱かけてやっと見つけたところだったから…。

派遣会社勤務社員

派遣勤務会社の社員は、業界のことを当然よく知っています。私の友達から聞いたその業界の縮図の話しです。

大手の派遣会社ほどコンプライアンスはしっかりしている。しかし大手であればあるほど本部経費など大幅なコストがかかり、派遣スタッフには請求金額の約5~6割しか渡らない。社会保険を入れると6~7割ほど。

残りの3~4割は全部粗利になる。中小企業の方が、経費が少ない分だけ派遣社員に還元しているところもある。

企業のニーズは、固定費にならない流動的な支出。派遣の仕組みができるまでは、今まで人件費を固定費として考えてきたが、今は人件費が流動費としてみている。流動費としていた部分の経費は、二度と固定費として計上しない。

一度甘い蜜を吸ってしまったら、もう辞められない。

派遣女子=貧困女子?

派遣女子たちが正規職員になることを望む大きな理由は、年収差です。正規社員は、年功序列の給与社会ではなくなったとはいってるものの、勤務期間に応じて給与は高くなっていきます。

それに比べて派遣社員はどうでしょうか。職場が一か所ではないし、務める先々で時給が変わっていきます。

30代派遣女子の平均年収は200〜250万円。一方、正規職員で働く30女性の平均年収は400〜450万円になります。

税金対策をしている主婦、自分の時間が欲しいため制限をかけているとはいえ、1年間で200万円の収入差は大きいです。

派遣女子への待遇が厳しいのは現実社会で起きている事実ですが、一括りに派遣女子が、貧困女子ではありません。自分の夢や時間を求めながら、快適に生活している派遣女子もいますから。

派遣切りドキュメンタリー:コロナ禍がもたらす貧困

参照元:http://hrog.net/2016072637596.html

労働派遣法の歴史

1985年:海外の派遣事業を取り入れる

欧米の派遣事業を真似て、現在のスタイルの人材派遣が誕生する。

この頃日本に合った派遣企業
  • 1966年設立:マンパワー・ジャパン
  • 1973年設立:テンプスタッフ
  • 1976年設立:PASONA(当時はテンポラリーセンター)

1986年:労働者派遣法 思考

労働保護のため、これまで行われてこなかった法律を整備。派遣労働者を保護する趣旨のもと、13業種のみの派遣が認められた。

最初(1986年)に認められた派遣13業務

  1. ソフトウエア開発
  2. 事務用機器操作
  3. 通訳、翻訳、速記
  4. 秘書
  5. ファイリング
  6. 調査
  7. 財務処理
  8. 取引文書作成
  9. デモンストレーション
  10. 添乗
  11. 案内・受付、駐車場管理等
  12. 建築物清掃
  13. 建築設備運転、点検、整備

1988年に追加で認められた派遣3業務

  1. 機械設計
  2. 放送機器等の操作
  3. 放送番組等の演出

1991年:バブル崩壊(金融危機・デフレ長期化)

正社員の人件費は固定費で痛い。派遣社員を活用して流動費にしたい。

人材派遣を利用しやすいように規制緩和が開発される。

1996年:派遣できる業務が26業務へ拡大

これら26業務を「政令26業務」と呼ぶ

  1. 研究開発
  2. 事業の実施体制の企画・立案
  3. 書籍等の制作・編集
  4. 広告デザイン
  5. インテリアコーディネーター
  6. アナウンサー
  7. OAインストラクション
  8. セールスエンジニアの営業
  9. 放送番組等における大道具・小道具
  10. テレマーケティングの営業

1999年:さらなる規制緩和へ

派遣できる業務が原則自由化

※ただし、港湾運送・建築・警備・医療・製造業務を除く。

2000年:紹介予定派遣解禁

2004年-2006年:さらに対象業務が拡大

1999年の改正のときには禁止されていた「製造業」「医療関連業務」の派遣が解禁

政令26業務の派遣期間を3年の制限から無制限に。製造業を除く、それ以外の業務は1年から3年に。

幅広い業務で派遣を利用することが可能になり、企業にとって使い勝手の良いシステムに。労働者派遣事業に関わる売り上げだから右肩上がりに急拡大。

2008年:リーマンショック

かながわの景勝50選にも選ばれています。10月には、金色に埋め尽くされたススキが、太陽に照らされる風の谷のナウシカの名シーン(笑)に似た風景が楽しめます。

雇用の調整が必要!→派遣契約の打ち切りに。こうした社会問題から人材派遣への批判が拡大

2012年:規制強化のため、派遣法改正

  • 日雇い派遣を原則禁止
  • 元勤務先へは離職後1年以内の派遣禁止

2015年:派遣事業の適正な運営のためは半法改正

規制緩和・強化の二面性がある改正となった。

1.規制強化の一面

派遣業者はすべて許可制へ。今までは届け出のみで事業が開始できる上に規制もゆるく、悪徳な事業者も現れ問題視されていた。

雇用安定措置の義務化をすることで、派遣期間を満了した派遣労働者が希望すれば、以下の措置を派遣元企業が講じなければならない。

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな就業機会の提供
  3. 派遣労働者以外の向き雇用労働者としての雇用機会の確保とその機会の提供

2.規制緩和の一面

政令26業務以外の業務では、業務ごと派遣を受け入れられる期間は3年まででしたが、すべての業務で、人を変えれば継続的に派遣を利用することができる。

3年を超えて、同一労働者が同一組織で働くことはできないが、別の組織であれば勤労が可能。また向き雇用派遣労働者に関わる派遣は期間制限がなくなる。

社会や経済の状況によって改正されてきた労働者派遣法。今後の動向にも注目です。

Posted by webclim1109